ソードのキングと風の時代

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2023. 7. 16(2023. 8. 4 加筆・修正)

西洋占星術やスピリチュアルに興味のある人なら、私たちが「風の時代」に突入したことをご存知の方も多いのではないでしょうか。2020年12月22日、水瓶座でグレート・コンジャンクションが起こり風の時代に突入しました。

グレート・コンジャンクションとは木星と土星が重なることを言い、20年に一度の周期で起こります。そして今回の2020年12月のグレート・コンジャンクションは水瓶座0度で起こりました。グレート・コンジャンクションが訪れる時、試練の星である土星と拡大の星である木星の影響によって社会に大きな変革がもたらされます。そして星座が属するエレメント(火・水・地・風)が変革の内容に関わってきますので、どの星座でグレート・コンジャンクションが起きるのかが重要になります。

2020年までの約240年間、1981年の天秤座(風のサイン)での例外もありますが、このグレート・コンジャンクションは牡牛座・乙女座・山羊座といった地のサインで起こっていました。ですから今までの時代は「地の時代」だと言われてきたのです。

タロットではペンタクルが地の要素を表します。ペンタクルが表すものを見るとわかるように「地」は現実世界や物質を表します。精神性や感情よりもお金や物質、あるいは肉体の健康や快楽などに重きを置く傾向にあります。同時に粘り強くコツコツ努力を積み上げる性質を持ち、変化に富むというよりは一つのことを成し遂げようとします。それ自体は良いも悪いもありません。このような性質の上に時代が成り立っていたということです。

この200年余りを振り返ると、確かに「地の時代」と言うに相応しいほど物質主義だったと言えるのではないでしょうか。精神性や霊性は疎んじられ、富を得たものこそが勝者であり強者であるとされてきました。また、さまざまなものを生み出した科学技術によって、数々の恩恵を受けたことは紛れもない事実ですが、皮肉なことにそれが最大の破壊にもつながりました。電気が発明されて第二次産業革命が起こると、それまで太陽とともに暮らしていた人々の生活が一変します。工業化によって「管理された時間」の中で働く労働者が多くなるにつれて、心を病む人が激増し始めたとも言われています。また、自然科学の発達が悲惨な戦争を生んだことは言うまでもありません。

そして、地の時代のもう一つの特徴として人々は健康をめざし続けました。結果として「健康」という言葉の呪縛に翻弄されてきたようにも見えます。もちろん健康であることは素晴らしいことですし、めざすことに何ら問題はありません。しかし、大量生産・大量消費の社会では常に農薬や添加物などにまみれた食べ物が市場の主流を占めており、さらには善意の裏には利権の問題が隠れていたりもします。自発的に健康をめざすのは構いませんが、社会が発する「健康であれ」というメッセージには矛盾と違和感を感じずにはいられません。医療に関しても西洋医学がもたらした光は大きいものだとは思います。しかし問題は光の部分だけしか見ていない、あるいは「見せていない」ことです。私たちは「健康」を人質に取られ、翻弄され続けていたのかもしれません。

光と闇という二元論で考えるならば、物質主義がもたらした光は強大です。こんなに急激に発展したのですから、それを否定することはできません。しかしその光によってできた闇は、それ以上に強大だったのかもしれません。物質的な面や拝金主義のようなお金に対する価値観だけが異様に膨れ上がってしまいましたが、もしかしたら地のエレメントが持つ堅実さや誠実さが強調されていたなら、また違った時代になっていたのかもしれません。

地の時代から風の時代に突入した今、物質主義から脱却していくことになると予想されます。西洋占星術での風の星座は、双子座、天秤座、水瓶座です。風の星座は「自由・知性・情報・社交的・変化」などの特徴を持っています。タロットで「風」を表すソードも知性や情報などといった特徴は共通していますが、タロットの場合には「試練」や「困難」など厳しい状況を表すことが多いです。

これまで私は、風の時代=自由で軽やかな時代だと捉えていました。実際、そのような言説をよく目にしていましたので、ワクワクした気分になっていました。しかしタロットが持つ意味を風の時代に当てはめてみると、自由のためには厳しさもあり、変化には痛みが伴うことが予測できます。これは大袈裟ではなく、現在の社会状況と一致しているように見えます。またご存知のようにタロットカードには正位置と逆位置があります。本質的な性質は変わりませんが、正逆によってポジティブな面が強調されるかネガティブな面が強調されるかが変わってきます。

ソードのキングは「公正・公平な判断」であったり「IT企業の社長」などを表します。ですから「すべてがデジタル化される中で公平な世の中になる」という意味で解釈することができます。しかしこれが逆位置になると「残虐性」「冷酷」「独裁」など非常にショッキングなネガティブさが強調されるようになります。また、ソードのキングは感情よりも理性を優先させ、距離を取りながら人と付き合いますので、たとえ正位置だったとしても人の温もりを感じるような世界ではないのかもしれません。「知識が豊富で頭が良いけれど、人付き合いはドライ」という感じなのです。個人的にはベタベタした付き合いが苦手なので、私自身もドライな付き合い方を好みますが、やはり温もりを感じられる付き合い方を求める人は多いのではないでしょうか。ソードのキングを擁護すると、「ドライだけれど優しくないわけではない、公平に接しているつもり」であることを付け加えておきます。

現在、世の中が向かう方向性から考えてみると、もしソードのキングが逆位置で提示される世界になったなら、デジタル化された社会の中で第四次産業革命が実現する狂気に満ちた世界であることは間違いないでしょう。その時、私たちは完全なるディストピアにいるのですが、ディストピアにいることすら気づかないかもしれません。もちろん正位置だったとしても第四次産業革命を免れることは不可能である可能性が高いです。実際、世の中は科学技術を駆使してそちらの方向へと向かっているわけですから。しかしながら、正位置であるならば、公平で人々の役に立つような方法で、それらの科学技術が活用される世界になるのだと思います。

風の時代は「自由で軽やか」ではないのか、ということについては次のように考えます。ここで重要になるのはソードが本来持っている高い精神性です。今、私たちが精神性をどれだけ高められるかによって、自由で軽やかな時代になっていけるかどうかが決まるのではないかと考えています。ですから、地の時代に忘れ去られた精神性を早急に取り戻すことが必要なのではないでしょうか。高い精神性と共に明るい風の時代をめざしていきましょう。