悪魔と言えば、サタン、ルシファー、バフォメットなどの呼び名とともに、光に対しての闇、善に対しての悪というように、ダークサイドの存在であることは既にご承知だと思います。
では、悪魔はいったい私たちにどのようなことをしてくる存在なのでしょうか。
命を奪う？傷つける？違います。悪魔は、私たちの命を奪うことはできません。また傷つけることもできません。では何をするのでしょうか。悪魔が私たちにすることは、ただ一つだけです。それは恐怖の種を植え付けることです。
恐怖の種を植え付けられた人間は、悪魔が何かしなくても自分自身でその種を育ててしまいます。そして頭の中が恐怖でいっぱいになると、悪魔がそこに住み着きます。悪魔はエネルギーとして存在しているので、人間の意識の中に住むことができるのです。
類は友を呼ぶと言いますが、まさにその通りで、ネガティブなことで頭がいっぱいになると、ネガティブな存在を自ら招き入れるかの如く扉を開けてしまうのです。悪魔に支配された人間は、悪魔のささやきによってネガティブな沼にはまり、自ら破滅へと進んでいくことになります。
引き寄せの法則で有名なナポレオン・ヒルは、著書『悪魔を出し抜け！』の中で、悪魔と対話した時のことを書いています。
悪魔
人間の意識をコントロールするのに最も適した道具は恐怖だ。人間の意識に恐怖の種を植え付けると、やがてその種が芽を出し成長する。そうやって、恐怖が占拠した空間を私がコントロールするのだ。恐怖の中でもとりわけ次の六つが最も効果が高い。貧困、非難、病気、失恋、老い、そして死への恐怖。
悪魔
唯一できるのは、人間の意識の中に何らかの恐怖を起こすという罰だけだ。しかし、現実には存在しないものへの恐怖は、現実に存在するものへの恐怖と同じくらい効果的だ。形はどうであれ、すべての恐怖は人間の意識の中で私の占拠する空間を広げてくれる。
ウェイト版タロットカードの「悪魔」では、男女の首が鎖で繋がれている様子が描かれています。しかし実は、逃げようと思えば逃げられるくらいブカブカでユルユルの鎖なのです。これは、いつでも自分の意志で悪魔から逃れられることを表しています。
恐怖や欲望に支配されてしまうのは、人間が悪魔に植え付けられた種を育ててしまったからであり、悪魔が強制しているわけではないのです。恐怖や欲望で頭の中がいっぱいになってしまうと、そこに悪魔が住み着いて人間をコントロールし始めます。
こうなってしまっては、もう悪魔から逃れられないと思うかもしれませんが逃れる方法があります。それは「考える」ことです。悪魔がコントロールできないのは、自分の頭で考えようとする人なのです。
ナポレオン・ヒルの問いに対して、悪魔自身が悪魔の敵は考える人間だと言っています。
ナポレオン・ヒル
敵というのは考える人間のことを言っているのだと思いますが、それでよろしいですか？
悪魔
その通りだ。
悪魔
私にとって一番居心地のいい物理的な場所は人間の意識の中だ。すべての人間の脳の一部は私が支配している。それがどのくらいの範囲になるかは、その人間がどのくらい考えているかによる。さっきも言ったように、私は考える人間を完全に支配することはできない。
このように、悪魔ができることは恐怖の種を植え付けることだけです。恐怖に支配されるということは自分の中に悪魔を住まわせることに繋がります。
悪魔は人間が堕落するようにささやき続けます。劣等感を刺激したり、欲望を増大させたり、絶望感へと導いたり、あらゆるネガティブな沼へ引きずり込もうとささやき続けます。恐怖に支配された人間はそのささやきに導かれるようにダークサイドに堕ちていってしまうのです。
そうならないためには、恐怖の種を育てないことが大切です。そして恐怖の種を育てないためには、自分の頭で考えることが必要です。考えない人は流されやすいため、軸となるものを持っていません。
頭に浮かんだことや心で感じたことに対して、これはいったいどういうことなのだろうと考えを巡らせる。なぜ自分はこのように思ってしまうのだろうか、これは正しいのだろうか、考えて答えを出していく。これこそが、悪魔にコントロールされない方法なのです。
昨今、思考停止状態の人が多いように感じます。自分ではきちんと考えているつもりでも、その考えは誰かの受け売りかもしれません。権威が言っているから、テレビが言っているから、有名人が言っているから、みんなが言っているから。けれどもその権威は信じるに値しますか？テレビはすべて正しいことしか言わないのですか？有名人が言っているだけで何故信じてしまうのですか？多数派が絶対正しいと言えますか？
今一度、自分はきちんと考えているのだろうかと、立ち止まってみることをおすすめします。悪魔にコントロールされないためにも。
『悪魔を出し抜け！』はあくまでも悪魔に教えてらった世の中の仕組みが書かれています。悪魔が本当のことを教えるだろうかと疑問が湧きますし、たとえ真実だとしてもどこかに罠があるかもしれません。また出版物がすべて正しいわけではないことも忘れてはなりません。しかし、考えることは非常に大切なことであると思いますし、読む価値はあるのではないでしょうか。
さて、今この時、悪魔は考えない人間をどこへ導こうとしていると思いますか？ヨーロッパのことわざに「地獄への道は善意で舗装されている」というのがあります。ピンときたあなたは、非常に勘が鋭いかもしれません。
参考文献
ナポレオン・ヒル『悪魔を出し抜け！』きこ書房
ナポレオン・ヒル
『悪魔を出し抜け！』
電子書籍版あり